お久しぶりです皆さん、まだ定期更新ができるわけではないですが、今回は自分の気分転換も兼ねて執筆したいと思います。
さて、皆さんは2024年、つまり今年の7月3日から新紙幣の発行が開始されることを知っていますか?
今年から遂にお馴染みの野口英世・樋口一葉・福沢諭吉から新たに北里柴三郎・津田梅子・渋沢栄一の3人へと紙幣の肖像が変わっていくのです!
しかし、そもそもこのことを知らなかったという人もいれば、新しい肖像の3人について全く知らないという人もいるかもしれません。
そこで今回は新紙幣が発行される経緯と新しい肖像3人の基礎知識を見ていきましょう!
新紙幣改刷の経緯
突然ですが、皆さんはお金がお金として成立するのに必要な要素は何だと思いますか?
答えは複数ありますが、特に「信頼」はお金がお金として成立するために一つの大きな要素です。
例えば、皆さんが普段使ってる一万円札それ自体はただの紙であり一万円の価値はありませんが、これが一万円であるという信頼があるからこそ一万円札として成立しています。
でも、もし皆さんが普段使っているお金に混じって大量の偽札があったとしたら、その信頼も大きく揺らいでしまいますよね?
つまり「偽札が作れない(偽造されない)」というのはお金が機能するために欠けてはならない大事な要素というわけです!
そのため、現在の紙幣にも偽造対策はたくさん施されてはいますが、紙幣を発行してから時間が経てば経つほど技術も進歩するので、偽札を作られるリスクはどんどん高まってしまいます。
そこで、定期的に紙幣を改刷することで偽札を作られないようにしているわけです(これを「偽造抵抗力」と言います)。
現在使われている野口英世・樋口一葉・福沢諭吉の日本銀行券(E号券)が発行され始めたのは2004年でかれこれ20年程経つので、紙幣の偽造抵抗力を維持するために今回の改刷が行われるというわけです!
近代日本医学の父 北里柴三郎
新千円札の肖像となる北里柴三郎は「近代日本医学の父」とも言われている偉大な学者さんです。
現在の千円札の肖像が黄熱病*¹の研究で有名な野口英世なので今回も医療分野の研究で大きな功績を遺した学者が選ばれましたね。
さて、そんな北里柴三郎は特に細菌学の分野で活躍しましたが、今回是非覚えておきたい彼の功績は特に以下の赤字で書かれた2つです!
- 世界で初めて破傷風菌の純粋培養に成功した
- 血清療法の発見
- 当時香港で流行したペスト菌の発見に貢献
破傷風というのは破傷風菌という細菌によって引き起こされる感染症であり、死亡率は50%(乳児の場合には80%以上)と言われています。
破傷風菌は体内に侵入すると強力な神経毒素を出し、これによって筋肉の痙攣などが起こる病気であり、死亡率の高さだけでなく神経毒による症状で亡くなるまで苦しみ続けることから多くの人に恐れてられていました。
しかし、北里柴三郎はこの破傷風菌の純粋培養に世界で初めて成功するとともに、破傷風に対する血清療法を発見しました。
血清療法は動物に弱毒・無毒化した毒素を注射することで、その動物の体内で毒素に対する抗体を作り出すというものです*²。
北里柴三郎はこの血清療法についてベーリングという同僚の学者と共同で「破傷風とジフテリア*³にた対する血清療法」に関する論文を発表し、この論文がきっかけでベーリングの方は第一回ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
北里柴三郎は受賞こそしませんでしたが、ベーリングからも彼の功績があってこそと言われています。
またこれ以外に1894年に香港で流行していたペスト菌*³を発見したことも有名ですが、同時期にペスト菌を発見し、それを実際にペストに関連付けたイェルサンという医者の方が有名かもしれませんね。
*¹黄熱病…蚊によって媒介される黄熱ウイルスを病原体とする感染症であり、重症患者に黄疸と呼ばれる組織や体液が黄色くなる現象が起きることから命名された。
*²血清療法と似たものにワクチン療法があります。弱毒・無毒化した病原体や毒素を用いるという点では同じですが、この両者には以下のような違いがあります。
血清療法 | ワクチン療法 |
抗体を含んだ血清を注射する | ワクチンを接種する |
抗体で病原体を排除する | 記憶細胞をつくり、感染症を予防する |
副作用やアナフィラキシーなどのリスク | 副反応や時間がかかるなどのリスクがある |
ワクチンの方はインフルエンザやコロナなどでお馴染みだと思いますが、弱毒・無毒化した病原体を人間に接種することで免疫反応を起こし、その病原体に対する記憶細胞を作り出すことで感染症に対抗するというものです。
一方で血清療法の方は主に馬などの動物に弱毒・無毒化した毒素を注射して、その動物の体内で作りだした抗体を含んだ血清を人間に注射して抗体の力で毒素などを排除するというものです。
血清療法の場合、馬などの血清が人間にとって異物であるためアナフィラキシーなどのアレルギー反応をはじめとした副作用のリスクがありますが、抗体を直接注射することから即効性に優れており、現在では毒ヘビに噛まれた際などの緊急性を要する治療で主に使われています。
一方でワクチンの場合には免疫反応を起こし、記憶細胞をつくるという過程から時間がかかるというデメリットがありますが、血清療法のようなアレルギーなどのリスクはないため、感染症予防ではこちらが主流となっています。
*³ジフテリア…破傷風のようにジフテリア菌が出す毒素によって引き起こされる感染症であり、かつては10%近くの死亡率がある病気でしたが、日本ではワクチンの普及によって1999年以降は発症例がありません。
*⁴ペスト…ペスト菌が原因となって発症する感染症です。
ペスト菌はネズミやイヌ・ネコに寄生するノミを媒介として人間に感染し、39℃以上の高熱や頭痛などの症状を引き起こし、治療が行われなかった場合の死亡率は60%~90%と非常に高いことが特徴です。
感染経路や症状でいくつかの分類があり、敗血症の症状を引き起こすペストの場合は、皮膚が出血斑で黒ずむため、黒死病とも呼ばれます。
日本の女子教育の先駆者 津田梅子
新五千円札の肖像となる津田梅子は「日本における女子教育の先駆者」とも言われている教育家です。
そんな彼女について押さえておきたい基礎知識は以下の赤字で書かれた2つです!
- 日本初の女子留学生の一人
- 女子英学塾(現在の津田塾大学)を創設
- 日本人女性として初めて欧米の学術雑誌に論文が掲載される
鎖国を続けていた江戸時代から明治時代へと時が流れ開国をした日本は、アメリカや欧米のような近代化を果たし、江戸幕府が結んだ不平等条約の改正をするために、岩倉具視を中心とする使節団(岩倉使節団)を派遣することにします。
この岩倉使節団の中にいた5人の女子留学生の内、最年少の6歳だったのが津田梅子であり、日本初の女子留学生の一人となったのです。
その後成長して教師として教育活動に尽力していく中で、家制度に基づいて良妻賢母を養成することに主眼が置かれた日本の女子教育に疑問を抱くようになりました。
そして津田梅子が1900年に学問を重視する女子高等教育機関として女子英学塾(現在の津田塾大学)を創設しました。
津田塾大学は名前を聞いたことがある人も多いかもしれませんが、これまでに優秀な女子学生を多く輩出してきた名門であり、一時期は「津田マフィア」と呼ばれるほど卒業生が目覚ましい活躍をして女性の社会進出を大きく後押ししました。
近代日本経済の父 渋沢栄一
新一万円札の肖像となる渋沢栄一は「近代日本経済の父」と呼ばれる実業家です。
彼の存在なくして現代の日本経済はあり得ないと言っても過言ではない彼の多数の功績の中でも今回は以下の赤字のものだけは必ず押さえましょう!
- 500以上の企業の経営や設立に携わる
例:第一国立銀行(日本最古の銀行であり、現在のみずほ銀行)を創立
東京商法会議所(現在の東京商工会議所)を創立
東京株式取引所(現在の東京証券取引所)を創立
その他、日本郵船会社や日本鉄道会社など様々な企業に関わっています - 600以上の教育機関や社会公共事業にも携わる
- 大蔵省(現在の財務省・金融庁)の官僚として様々な政策に関わる
農民の子として生まれた渋沢栄一はその手腕を認められたことで、江戸幕府の第15代将軍となる徳川慶喜に仕えて後に明治政府で官僚となるという大出世を果たし、後に実業家として多くの企業の経営や設立にも携わりました。
そんな渋沢栄一が「近代日本経済の父」と呼ばれる所以は彼が経営や設立に関わった企業の数とその重要度にあります。
彼が携わった企業はここでは挙げきれないほど多いですが、気になる人は一度調べてみてみるのも面白いと思います。
「え!?これの企業にも関わっているの!?」となるはずです。
そんな中でも特に第一国立銀行の創立に携わったのは有名ですので知らなかった人は是非この機会に覚えておきましょう!
まとめ
それでは今回見てきた3人の要点を簡単に整理しましょう!
- 北里柴三郎→世界で初めて破傷風の純粋培養に成功し、血清療法を発見
- 津田梅子→日本初の女子留学生であり、現在の津田塾大学を創設
- 渋沢栄一→日本最古の銀行である第一国立銀行など500以上の企業の経営・設立に携わる
とりあえずこれさえ押さえておけば、新紙幣に変わってから全く知らずに恥ずかしい思いをするようなことはないと思います。
もし新紙幣に変わってからも知らない人がいたら、これを見た皆さんが教えてあげれば尊敬されること間違いなしでしょう!