断定の助動詞「なり・たり」の意味や活用【古文】

助動詞解説講座 なり・たり 国語

今回は断定の助動詞「なり・たり」を見ていきたいと思います。

他の助動詞についてはこちらの記事でまとめてあります。

Homura
Homura

この講座の難易度は★★☆☆☆です。

「なり」

「なり」の活用形

「なり」の活用表

「なり」は連体形接続の助動詞で、体言(名詞)にも接続します。

「なり」の活用はナリ活用と呼ばれる形容動詞型の活用をしますので注意してください。

「なり」の用法

「なり」の意味は以下の2つです。

  1. 断定
  2. 存在

断定

~である」と訳します。

例:父はなほ人、母なむ藤原なりける(伊勢物語)
訳:父は普通の(身分の)人であったが、母は藤原であっ

連用形の「に」は接続助詞の「て・して」と組み合わせて、例文のように、「~であって」と訳す用法があります。

また、連用形「に」のその他の用法として、補助動詞の「あり・をり・侍り・おはす・います・候ふ」と組み合わせるものもあります。

例:この国の人あらず(竹取物語)
訳:この国の人ない

存在

~にある~にいる」と訳します。

例:御前なる獅子・狛犬(徒然草)
訳:御前にある獅子・狛犬

断定の「なり」と伝聞・推定の「なり」の見分け方

「なり」という助動詞には今回の講座で扱っている断定の「なり」と伝聞・推定の「なり」の2種類があります。

この2つの「なり」の見分け方について、以下で解説していきます。

接続による判別

まずは、それぞれの助動詞の接続の違いによる見分け方です。

断定の「なり」→連体形+体言
伝聞・推定の「なり」→終止形(ラ変型には連体形)

断定の「なり」は連体形と体言に接続する一方で、伝聞・推定の「なり」は終止形接続の助動詞です。

そのため、この接続の違いによる判別が基本となります。

ただし、終止形と連体形が同形のものやラ変型に活用する動詞には、伝聞・推定の「なり」も連体形接続になるため、こうした場合には文脈から判断しましょう。

断定の「なり」と判別できるパターン

主語の人称が一人称の場合には、断定の「なり」になるという判別方法もあります。

自分の見たことや聞いたことを話す時に、「私は~を見たようだ」と伝聞・推定の言い方はしませんからね。

例:男もすなる日記といふものを、
  女もしてみむとて、するなり(土佐日記)
訳:男がするという日記というものを、
  女である私もしようと思って、するのである

「男もすなる」は、人称が三人称の一方で、「女も~するなり」は、人称が一人称のため、断定の「なり」と分かります。

ただ、例文の場合には「すなる」と「するなり」で終止形と連体形とそれぞれ接続が異なるという点から確実に判別することができます。

また、過去・詠嘆の助動詞「けり」と組み合わせて、「なりけり」の形で使われている場合も、断定の「なり」になるという判別方法もあります。

例:紅葉なりけり(百人一首)
訳:紅葉であったのだなあ

伝聞・推定の「なり」と判別できるパターン

「なり」が接続している述語が撥音便をおこしていた場合には、伝聞・推定の「なり」になるという判別方法もあります。

例:海月のなり(枕草子)
訳:海月の(骨)であるようだ

例文の「ななり」の「な」は断定の「なり」の連体形「なる」の撥音便「なむ」の無表記の形で、「なり」の方は伝聞・推定の「なり」の終止形です。

今回は「なり」が接続している「な」が撥音便をおこしているので、伝聞・推定の「なり」と判別できます。

「なり」のまとめ

それでは、「なり」について簡単にまとめていきましょう。

「なり」は連体形・体言接続の助動詞で、意味は以下の2つ

意味訳し方
断定~だ・~である
存在~にある・~にいる

連用形「に」は接続助詞や補助動詞と組み合わせて使われる

伝聞・推定の「なり」とは接続の違いや文脈などから見分ける

「たり」

「たり」の活用形

「たり」の活用表

「たり」は体言に接続する助動詞です。

「たり」の用法

「たり」の意味は断定だけです。

  • 断定

断定

~だである」と訳します。

例:忠盛備前守たりし時(平家物語)
訳:忠盛が備前守であった

断定の「たり」と完了の「たり」の見分け方

「たり」にも今回の講座で扱っている断定の「たり」とは別に完了の「たり」があります。

この2つは、接続の違いで見分けることができます。

断定の「たり」→体言
完了の「たり」→連用形

「たり」のまとめ

それでは、「たり」について最後に簡単にまとめましょう。

「たり」は体言に接続する助動詞で、意味は断定のみ

意味訳し方
断定~だ
~である

完了の「たり」とは接続の違いで見分ける

まとめ

今回は断定の助動詞「なり・たり」についてまとめてきました。

「なり」は断定と伝聞・推定を、「たり」は断定と完了の2種類があるので、今回はその見分け方を重点的に解説してきました。

伝聞・推定の「なり」についてはまた別の機会にまとめていきたいと思います。

完了の「たり」についてはこちらの記事にまとめてあります。

タイトルとURLをコピーしました